〈相続〉相続人2 状況によって変わる相続人・相続分
相続人シリーズ2回目をお届けします。
今回は、【相続放棄・相続廃除・相続欠格・養子・半血兄弟】が相続人・相続分に影響する場合を解説します。
相続放棄
相続放棄とは、亡くなられた方(被相続人)の財産を相続する権利を放棄することです。
相続放棄をした場合、初めから相続人とはならなかったものとみなされ、相続順位が次の順位へと移ります。
POINT!!
【相続放棄をした場合、代襲相続は起きないの?】
相続放棄は、初めから相続人ではないとみなされるため、代襲相続とはなりません。
例1)
法定相続人が配偶者と子供3人(A・B・C)の場合【両親ともご健在で子供3人共に相続放棄したケース】
〈相続人・相続分〉
→配偶者3分の2、父母それぞれ6分の1ずつ
例2)
法定相続人が配偶者と子供2人(D・E)の場合【子供Dが相続放棄するケース】
〈相続人・相続分〉
→配偶者2分の1、子供E2分の1
相続放棄についてはこちらの記事をご参照ください。
相続廃除
相続廃除とは、相続人から虐待を受けたり、重大な侮辱を受けたりしたときなど、相続財産を渡したくない場合に被相続人が家庭裁判所に申し立てることで相続権を失わせる手続きです。
相続廃除された法定相続人は、相続人ではなくなり、代襲相続人がいる場合は代襲相続となります。
代襲相続人がいない場合は、次順位の相続人へ相続権が移ります。
POINT!!
実際には、相続権を剥奪するという重大な権利を奪うことになるので、家庭裁判所では非常に厳正に審査が行われています。申し立てたからといって必ず相続廃除が決定するわけではありません。
例1)
法定相続人が配偶者と子供2人(F・G)の場合【Fには子供が1人、Gには子供がいない場合でF・Gともに相続廃除されていたケース】
〈相続人・相続分〉
→配偶者2分の1、Fの子供(被相続人の孫)2分の1 となります。
例2)
法定相続人が配偶者と子供2人(H・I)の場合【H・Iともに子供はおらず、相続廃除されていたケース】
〈相続人・相続分〉
→代襲相続人もいないため次順位の父母が相続人となります。
配偶者3分の2、父母それぞれ6分の1ずつ
相続廃除の詳細については別の投稿にて解説します。
相続欠格
相続欠格とは、民法891条に定められた欠格事由に該当した場合に適用される、相続人の相続権を剥奪する措置です。
※具体的には、被相続人や他の相続人を殺害した場合(殺人)や殺害しようとした罪(殺人未遂)で刑に処せられた場合や、被相続人が殺害されたことを知りながら、告訴しなかった場合などのケースです。
POINT!!
相続欠格では、相続廃除と異なり、被相続人の意思とは無関係に成立します。
また、相続欠格に該当した子供の子供(被相続人の孫)がいる場合には、代襲相続となります。
例)
法定相続人が配偶者と子供1人(J)の場合(※兄弟や両親、祖父母等もいない)【Jは子供がおらず相続欠格に該当するケース】
〈相続人・相続分〉
→配偶者のみが相続人となります。
相続欠格の詳細については別の投稿にて解説します。
養子
養子には普通養子縁組と特別養子縁組があります。
普通養子縁組
- 実親、養親両方の法定相続人になります。
特別養子縁組
- 養親の法定相続人になります。
どちらの縁組も、相続分は実子と同じです。
また、養子縁組後に生まれた子供(養子の子供)は、孫として代襲相続人となります。
例1)
法定相続人が配偶者と子供1人(K)と養子(L)1人の場合
〈相続人・相続分〉
→配偶者2分1、子供Kと養子Lそれぞれ4分の1ずつ
例2)
法定相続人が配偶者と子供2人(M・N)と養子(O)1人の場合【養子Oはすでに亡くなっていたが、縁組後に生まれた子供Pがいるケース】
〈相続人・相続分〉
→子供2人(M・N)と孫Pはそれぞれ3分の1ずつ
POINT!!
養子で特に注意したいのは、片親だけとの養子縁組のケースです。
この場合実子とは、片親だけが同じとなり、このことを半血兄弟といいます。
下記の半血兄弟姉妹と同様の扱いになります。
半血兄弟姉妹
半血兄弟とは、父・母どちらか一方のみを同じくする兄弟姉妹のことをいいます。
例えば被相続人の先妻との子供と、後妻との子供の関係をいいます。
POINT!!
半血兄弟が相続人となる場合に注意が必要なのは、半血兄弟姉妹の相続で別の半血兄弟姉妹が相続人となるケースです。
例)
被相続人の父は前妻との間に1人子供がいるケース(被相続人は、子供はおらず父母ともに既に亡くなっている場合)
法定相続人が兄妹(Q・R)、父の前妻との子供(S)の場合
〈相続人・相続分〉
→兄弟(Q・R)はそれぞれ5分の2ずつ、前妻の子供(S)は5分の1
上記のように半血兄弟が兄弟姉妹として相続人となるケース以外においては、実子と同様の相続分となります。
〈まとめ〉
いかがだったでしょうか。
今回は相続人・相続分に影響する場合についての内容でしたので、各テーマの詳細は別の投稿にてまとめます。
様々な状況により変化する相続人・相続分です。
考えていなかった方が相続人となる場合も多々あります。
一度、家族の状況で照らし合わせてみると良いかもしれません。
最後までご覧いただきありがとうございました。